「填本が嫌なら全然断ってくれてもいいから」

「い、嫌じゃないっ!」



前のめりで否定すると、千崎くんの切れ長の目が見開かれる。


背に腹はかえられない。


だって、決めたんだ。
千崎くんの恋を応援することを優先する、と。

私の気持ちは必死に押し殺せばなんとかなるんだから。



「やろう!毎週月曜、放課後、ここで会おう」

「よし、決まり。俺と、填本の密会。
その名も?」

「……ん?」

「その名もー?」

「え?名前付けるの?」

「当たり前だろ、そのほうが楽しみになるじゃん。
ほら、なんかいい名前出して」



楽しみになるのは、千崎くんだけなんだけど。
……なんてことは言えないので、私は千崎くんの雑なバトンタッチを受け取るべく、必死で考える。