───恋のキューピット。

私、填本凛(まきもと りん)に付けられた、恐れ多すぎるもう1つの名だ。

その名の通り、友達の恋愛を後押ししたり、話を聞いて応援したり、友達の恋を成就させるために手助けをしている。

私が高校生になってから高校2年生の今までに6組の恋を成就させてきた。

友達に頼まれて実らなかった恋は未だ無いため、失恋のバツは付かず、百発百中のまま連勝している。


朝っぱらからアドレナリン全開で幸せを噛み締めながら、世莉と一緒になって喜ぶ。


世莉はバスケ部の裕介くんに1年生の時から片思いしていて、どうやら私に恋のキューピットを頼むとその恋は実るという噂を耳にしたようで、2ヶ月前に協力して欲しいと頼んできた。

私はそれを一つ返事で受け入れ、ついにやっと世莉の恋は実り、昨日から2人は晴れて付き合うことになった。


この瞬間が好きだ。恋が実った瞬間の友達の幸せそうな顔を見るのも、喜びを体全身で表現しながら私に報告し一緒に喜ぶ時間も。


だから恋のキューピットはやめられない。


友達の幸せは、私の空っぽな幸福中枢をお腹いっぱいに満たしてくれる。