「なんか……」
「……ん?」
「なんか、手に力が入ってないみたいな気する」
「え、ちゃんと、ギュッてされてるよ?」
「でも、なんか夢の中みたいで、どれだけ抱き締めても抱き締めてる感じがしないっていうか……ごめん、幸せすぎて、ちょっと身体麻痺してるわ」
なにそれ、と思わず笑ってしまう。
「このままだと、抱き潰してしまうかも」
確かに、ちょっと力が強くて苦しい。
でも、その苦しさが嬉しいと思う。
私もまた心が幸せで麻痺しているのかも。
私だって、片隅では幸せになりたいと思っていた。
その幸せはずっとまだ先だと思っていたけど、千崎くんが運んできてくれた。
両思いってこんなに幸せだったんだ……。
「散々困らせて、傷つけて、泣かせてごめんな。
好きになってごめん、なんて言わせてごめん」
熱で弱り果て緩んだ口が放った告白は、どうやらちゃんと千崎くんの耳に届いていたようだ。
フルフルと左右に首を振って、千崎くんのごめんを否定する。千崎くんのせいではないと。
千崎くんは抱き締める力を緩めると、私の顔を覗き込んで指先で涙を拭ってくれる。
その流れで、額や頬を触る。
「まだちょっと熱いな」
心配する千崎くんをよそに、額を触る手を掴んで千崎くんの大きくて骨ばった手を両手で握る。


