そのあと、何度か見かけた。

彼女が隣のクラスだと知ったのは、いつも彼女の隣にいる女子生徒が男子の中で話題だったからだ。


【柏木 紗良】


何度も男子に聞かされたその名前は、聞かされすぎて憶えてしまった。

"美人だから"と言われていた子は、柏木なんだろうと顔を見ればわかるほど綺麗な顔をしていた。

その隣でいつも彼女は楽しそうに笑っていた。


2人とも、ただの同級生だった。

これからもただの同級生だと思っていた。



ただの同級生から気になる存在に変化したのは、高校生になって初めてのクラスマッチの日。

その日から、全ては始まった。



この学校は、クラスマッチで学年ごとに優勝クラスを決め、見事優勝したクラスには、優勝賞品としてこの学校の売店で使える購買券3千円分がクラス全員に配られるという盛り上がる催しがあった。

運動は全般的に得意だった俺は、なぜか初っ端からクラス全員に期待されてしまった。

俺にボールを集めれば絶対点を入れてくれる、という脅しのようなプレッシャーをかけられてしまい、みんなから期待の目を向けられる。


本当に、逃げたくてしょうがなかった。