「クラスメイトなのに変な言いがかりはやめてよ。私たちはただ本当のことを何気なく話してただけじゃん?」

「悪意があった」

「それは填本さんの思い違いじゃない?」

「思い違いで済ませようと思ったけど、明らかに紗良にだけここずっと態度違うじゃん。この前だって、日直の仕事押しつけようとしてたし」

「別に押しつけてねぇし、机が乱れてるって指摘されたからやりたいのかな?って思って譲ってあげたの」

「物は言いようだね。そんなに綺麗な紗良に嫉妬する暇があるなら、せめて心でも綺麗に磨いたら?もう手遅れだろうけど」



親友を馬鹿にされた怒りが込み上げてきて、思わず嫌味ったらしく言い返してしまう。

私の全力な哀れな目に、カチンときた彼女たちの中の1人が、ずっと流れ続けている蛇口のハンドルを更に大きく捻り、蛇口の口を指で覆ってから私に向けて水を噴射させようとする。

勢いを増した水と、指で分散された入口は、シャワーのように範囲を広げて狙いを私に定めた。


やばっ……濡れるっ……!


突然の行動に、咄嗟に顔を背け目を瞑る。

……だが、いつまで待っても水は飛んでくることはなく、不審に思いゆっくりと目を開ける。


目を開ければ、瞬時に誰かの背中が私の視界に飛び込んできた。

体格から見て男子生徒。


……いや、それより、誰?


誰なのか答えがわかる前に、彼が水に濡れてしまいそうになる私の盾となって、自らを犠牲にして守ってくれたのだと悟る。