「はぁ……はぁ……」 腹痛に耐えながら、なんとか背筋を伸ばして廊下を歩いた。 千崎くんから私が見えなくなるまで。 紗良の言うとおり、私は現実から逃げているのかもしれない。 それでも怖いのだから仕方ない。 千崎くんに想いを伝えることも、千崎くんにこの気持ちがバレてしまうことも、紗良と想いが通じあったと報告を受けることも、全部千崎くんの口からは聞きたくないんだよ。 ───『逃げるのは、ずるいよ』 紗良の言葉を思い出して、また痛みが走った。