あと少し。もう少し。
千崎くんが勇気を振り絞って紗良に想いを伝えたら、きっともっと紗良は意識するはず。
早く伝えてあげないと、脈はあるよって言ってあげないと、あとは千崎くんが頑張るだけだよって応援しないと。
きっと喜ぶだろうなぁ。
好きなアーティストが一緒だ、と2人の共通点を千崎くんに教えてあげた時みたいに、顔をクシャクシャにして喜んでくれる。
それは想像するだけで、私は幸せな気持ちでいっぱいになる。
大事な人の喜ぶ姿を見るのは、私にとって堪らなく幸せなことだから。
じゃあ、なんでずっと黙ってるんだろう。
なんで言えないんだろう。
先週の恋のお楽しみ会でも、千崎くんと2人っきりで話をしたのに。いつでも言える時間はあったのに。
雑談みたいな他愛のない話ばかりしていたのに、「またね」って別れるまで、その事は忘れていたみたいに心に秘めたまま言わなかった。
まだ紗良の様子を見てから。
タイミングが合わなかった。
忘れていた。
そんな都合のいい言葉ばかり並べて、私はずっと千崎くんに伝えることを避けている。
そんなの、ずるい。
私は、こんなにもずるかったっけ……?


