た、確かに……。
千崎くんは誰かをからかったり、意地悪なんてしなさそう。
そんなお茶目なことをやるとするなら、千崎くんといつも一緒にいるクラスのムードメーカー、加瀬 倫太郎(かせ りんたろう)くんの方だろう。
「じゃあ、本当に私に話があるの?」
「ん」
千崎くんは背もたれにしていた本棚に本を直すと、軽やかに立ち上がる。
そして、今度は見下ろされる。
千崎くんは私の目の前に立ち直すと、見つめたまま口を閉じ、小さく息を吐いて心を落ち着かせる。
心を落ち着かせないと話せないことなのだろうか。
2人っきりの旧図書室で、どちらも言葉を落とさないので、当然静寂だけが流れ続けている。
だからなのか、私の心臓の音がやけに身体の中で響いている。ドキドキ、とうるさい。


