気持ちを切り替え、奥の本棚に進むと、
「……え、」
視界に飛び込んできた光景に、思わず目を見張り驚いた声が洩れる。
そこには、床に座り静かに本を読んでいる千崎くんがいた。
私の声に千崎くんは本から視線を移し、ゆっくりと私を見上げる。
「なんで、驚いてる?」
千崎くんの形のいい唇がパクパクと動いている。
それを唖然としながら見ていると、千崎くんは小さく笑みをこぼし、手に持っていた本をパタンと閉じる。
「だ、だって、人の気配感じないくらい静かだったし」
「そりゃあ、こんな辛気臭いところで1人騒いでたら変人だろ?」
「それはそうなんだけど……あんまり話したことないのに突然話があるってメモが入ってるから、入れ間違えたか、からかわれたかって考えるのは普通だよ」
「同じクラスなのに席間違えたりしない、あんま話したことないクラスメイトをからかうなんて悪趣味も持ってない」


