数秒程の沈黙が流れ、千崎くんは「俺に言っても、填本には何のメリットもないよな」と自嘲気味にこぼした。
もしかしたら自分を好きなのかも……なんてことは1ミリも考えてないのだと、脳内を覗かなくてもわかる。
眼中には入らない、と言われている気がして、勝手に傷ついてしまう。
「柏木と話すのはまだ緊張するし、音楽の話してる時は楽しいし……綺麗だと思う」
まだ噛み砕いていない飴玉を誤って飲んでしまった時みたいな、息詰まりを感じた。
それでも、千崎くんは続ける。
「これが、恋だとしたら……」
どこか一点を見つめていた千崎くんの黒目が動いて、私を見つめる。
私も見つめたまま、その言葉の続きを待つ。
だけど、喉まででかかっていた言葉の続きは、徐々に千崎くんの気管を下りていき、胸の内に沈んでいった。
私が千崎くんに言えない気持ちがあるように、千崎くんも私に言えない気持ちがあるのかもしれない。
それはそうだ。
私は、"ただの恋のキューピット"なのだから。


