「えー、真海ー、真海深海ー、」

担任の加内は波乗りだ。
今日だって日に焦げた自慢の肉体を白いポロシャツで際立たせている。
本人曰く、「焦げてマッチョはモテる!」らしい。
ただ、正直に言う。
ひたすら暑苦しいだけである残念な25歳である。

「真海さん、呼ばれてるんよ?」

こっちのも海まち暮らしの極めつけかのような綺麗に焼けた焦げ茶の肌を惜しげなく出してる。
海でよく泳ぐからか、塩素で色素の抜けた茶髪は、彼女によく似合う。
笑うとえくぼのできる頬も人柄の良さを表しているかのよう。
外見に弱点のない彼女は、漁港のおいちゃんの一人娘、そして、この町のアイドル、原蒼依。
美人でクラスどころか街の人気者。

「うん、知ってる」

目をできるだけ合わせないようにして、返事をする。
私は原蒼依が大嫌いだ。

「じゃあ返事したりなよ~、竹ちゃんかわいそうやないの~」

原蒼依がこちらを見て、その頬にえくぼを作りながら言う。

彼女の少し訛りのある話し方は人から見れば、愛嬌のある可愛らしい話し方、という印象なのかもしれない。
ただ、彼女を毛嫌いする私からすれば、苛立ちを彷彿とさせるのには十分な材料になるわけで、

「そうだね」

(あぁ、嫌いだ。)

そう再認識するだけだったりする。