小墾田宮では、、、、
「中宮様、大伴大臣様がお見えになりました」
「通しなさい」
中宮が静かに言った。
ガタガタと戸があき、大臣と数人の臣下が入ってきた。
「大臣よ急に呼び出してしまいすまぬな、実は…今晩以前話した通りに事を進めて欲しい」
「えっ、今宵でございますか?」
「そうだ今宵だ。すぐに支度をして欲しい」
「しかし、今日は非常に冷え込んでおりまして、今宵は雪が降るかもしれません」
「構わぬ、今宵でなければならぬのだ」
「はぁ…そうですか…承知いたしました。では早速準備いたします」
パカッパカッパカッ、
夕方にさしかかった時一台の馬車が小墾田宮から橘宮に向け出発した。
「誰か、誰かおらぬか!」
「お待ち下さい、今参ります」
門番の漢人がハァハァと息を切らしながら走ってきて門を開けた。
「小墾田宮からの使いのものだ。すぐに燈花様をお連れしてくれ」
「えっ、今でございますか!」
漢人が驚いて言った。太陽はだいぶ西に傾き薄暗い。
「そうだ、早く呼んできてくれ」
男が切羽詰まった様子で言った。
「は、はい」
コンコン、コンコン。
「燈花様、漢人でございます」
「漢人どうしたの?」
「実は今、小墾田宮から使いのものが来ており、燈花様をお呼びしています。何か急ぎの用のようです」
「小墾田宮から?」
「はい」
こんな時間に何かしら?まさか中宮様に何かあったとか…
「すぐに支度をして行くからあなたは先に戻っていて」
「承知しました」
漢人の様子からして急ぎのようだったし、ひとまず小彩には伝えずに急いで部屋を出て東門へと向かった。
門の前に見慣れぬ一台の馬車と男が立っているのが見えた。
「燈花様でいらっしゃいますね?中宮様の命により小墾田宮より参りました。急ぎ馬車に乗って頂けますか?」
まさかこんな夕暮れから小墾田宮に行くことに疑問を感じたが、確かに馬といい男の身なりからして小墾田宮の人間である事は間違いない。
「わかりました。漢人、小彩に中宮様にお会いしてくるから心配はいらないと伝えておいてちょうだい」
漢人が大きく頷くのを確認した後、馬車に飛び乗った。日はすっかり落ちていた。馬車の松明に火が灯されると、馬車はゆっくりと進み始めた。遠くに都の建物を囲む何本もの松明の灯りが見える。凍り付くような寒さにブルっと体を震わせた。
今晩はやけに冷えるわね…かじかむ手にハァと息を吹きかけた。何故だろう、しばらくしても馬車は止まる気配がない。辺りは真っ暗でよくわからない。
ガタガタ、ガタガタ…やはりおかしい…いつもならとうに到着しているはずだ…
しばらくしてようやく、馬車がゆっくりと止まった。
「燈花様どうぞお降り下さい」
男が言った。
「ええ」
辺りは真っ暗闇だったがすぐにここが小墾田宮ではないことはわかった。
「ここはどこなの?」
「この道の先で中宮様がお待ちです」
使いの男が静かに答えた。
「今宵は冷え込んでおりますので、この上着を羽織って下さい。あとこの燈籠をお使い下さい」
男はそう言うと膝丈まであるローブのような温かな上着と小さな燈籠を手渡してくれた。灯籠の中では小さな炎がゆらゆらと揺れている。
「この道の先に行けばいいの?」
「左様でございます。この林の中を少し歩かれると先に松明が灯ってあります。その松明の灯りを頼りにお進み下さい」
使いの男はここまでですと言うように、深々と頭を下げた。
「中宮様、大伴大臣様がお見えになりました」
「通しなさい」
中宮が静かに言った。
ガタガタと戸があき、大臣と数人の臣下が入ってきた。
「大臣よ急に呼び出してしまいすまぬな、実は…今晩以前話した通りに事を進めて欲しい」
「えっ、今宵でございますか?」
「そうだ今宵だ。すぐに支度をして欲しい」
「しかし、今日は非常に冷え込んでおりまして、今宵は雪が降るかもしれません」
「構わぬ、今宵でなければならぬのだ」
「はぁ…そうですか…承知いたしました。では早速準備いたします」
パカッパカッパカッ、
夕方にさしかかった時一台の馬車が小墾田宮から橘宮に向け出発した。
「誰か、誰かおらぬか!」
「お待ち下さい、今参ります」
門番の漢人がハァハァと息を切らしながら走ってきて門を開けた。
「小墾田宮からの使いのものだ。すぐに燈花様をお連れしてくれ」
「えっ、今でございますか!」
漢人が驚いて言った。太陽はだいぶ西に傾き薄暗い。
「そうだ、早く呼んできてくれ」
男が切羽詰まった様子で言った。
「は、はい」
コンコン、コンコン。
「燈花様、漢人でございます」
「漢人どうしたの?」
「実は今、小墾田宮から使いのものが来ており、燈花様をお呼びしています。何か急ぎの用のようです」
「小墾田宮から?」
「はい」
こんな時間に何かしら?まさか中宮様に何かあったとか…
「すぐに支度をして行くからあなたは先に戻っていて」
「承知しました」
漢人の様子からして急ぎのようだったし、ひとまず小彩には伝えずに急いで部屋を出て東門へと向かった。
門の前に見慣れぬ一台の馬車と男が立っているのが見えた。
「燈花様でいらっしゃいますね?中宮様の命により小墾田宮より参りました。急ぎ馬車に乗って頂けますか?」
まさかこんな夕暮れから小墾田宮に行くことに疑問を感じたが、確かに馬といい男の身なりからして小墾田宮の人間である事は間違いない。
「わかりました。漢人、小彩に中宮様にお会いしてくるから心配はいらないと伝えておいてちょうだい」
漢人が大きく頷くのを確認した後、馬車に飛び乗った。日はすっかり落ちていた。馬車の松明に火が灯されると、馬車はゆっくりと進み始めた。遠くに都の建物を囲む何本もの松明の灯りが見える。凍り付くような寒さにブルっと体を震わせた。
今晩はやけに冷えるわね…かじかむ手にハァと息を吹きかけた。何故だろう、しばらくしても馬車は止まる気配がない。辺りは真っ暗でよくわからない。
ガタガタ、ガタガタ…やはりおかしい…いつもならとうに到着しているはずだ…
しばらくしてようやく、馬車がゆっくりと止まった。
「燈花様どうぞお降り下さい」
男が言った。
「ええ」
辺りは真っ暗闇だったがすぐにここが小墾田宮ではないことはわかった。
「ここはどこなの?」
「この道の先で中宮様がお待ちです」
使いの男が静かに答えた。
「今宵は冷え込んでおりますので、この上着を羽織って下さい。あとこの燈籠をお使い下さい」
男はそう言うと膝丈まであるローブのような温かな上着と小さな燈籠を手渡してくれた。灯籠の中では小さな炎がゆらゆらと揺れている。
「この道の先に行けばいいの?」
「左様でございます。この林の中を少し歩かれると先に松明が灯ってあります。その松明の灯りを頼りにお進み下さい」
使いの男はここまでですと言うように、深々と頭を下げた。
