☆麗side☆



大好きな子が去り、広い部屋に取り残された俺。



「ほんと、いい子すぎなんだから」


陽彩ちゃんの礼儀正しい姿が何度も蘇り、俺は立ったままクスクスと笑いだしてしまった。



でもね……

本当はもっともっと、抱きしめていたかったのになぁ……

 

俺は階段をのぼる。


陽彩ちゃんがさっきまで寝ていたベッドに腰を掛け、床に置きっぱなしの室内シューズを見つめた。


中敷きに、ちゃんと名前が書いてある。


『白石 由乃』って。

 

「これがガラスの靴なら、俺が陽彩ちゃんの王子様になれるのに……」



切ない溜息が勝手にもれる。


大好きな子温もりを少しでも感じたくて、俺はベッドに仰向けで倒れこんだ。



「俺はもう、後もどりはできない。人がうらやむ栄光を捨ててまで、大好きな子に尽くすと決めたんだ」



仰向けのまま、天井に手を伸ばす。


目じりをキリっと吊り上げ、握りしめた拳に極甘な決意を込めた。




「俺は誓うよ。この命に代えても、陽彩ちゃんを守り抜いてみせる!」