「左腕の傷跡はもうすっかり、消えているみたいだけど。まだ痛みは残っているんでしょ? 遠慮しないで」


「遠慮なんか……」

   
「俺は癒しの国のプリンスって呼ばれているんだ。俺の極甘なぬくもりで、陽彩ちゃんの心の傷も一緒にふさいであげるよ」 



あぁ~~。
 


声は甘いし。

最愛の人を抱きしめるように、私の頬にほっぺをこすりつけてくるし。



この人、違う意味で魔王と同じくらい厄介だ……

絶対に、深く関わっちゃいけないタイプ。


あそこだけは、お世話になりたくなかったけれど……


私は力を振り絞り、麗先輩の腕から逃げ出した。



「保健室のベッドで寝てきます。お邪魔しました」




ぺこりと頭を下げた私は、部屋から勢いよく飛び出した。


職員室を出るときみたいに、ドアの外でもう一礼。

音がならないように、ゆっくりと丁寧に開き戸を閉める。