ゆらゆらと水に浮かぶ体が心地良い。
絶対に沈まない。そんな根拠のない確信を持ってキラキラと光る空を眺める。
ずっとここにいたい。
そう思ったものの、空にぼんやりと何かが浮かんでは消えていた。
ピッ、ピッ…
まだ夢の中だと一瞬感じてしまうほどに真っ白な空間だった。
真っ白だけど、音がする。そして、風を感じる。
何を考える訳でもなく、ただぼーっとする。
目覚めて30分、彩は真っ白な空間を眺めていた。
夢の中で水に浮かんでいたみたいに。
「白井彩さーん。気分はどうですかー?」
そんな声が聞こえて、真っ白な空間にひょこっと知らない顔が出てきた。
「あっ!目が覚めたね。おはよう。」
優しい顔の看護師さんだ。
そんなことを思いながら、またぼーっとする。
しばらくして、お母さんの声が聞こえて、顔がぐしゃぐしゃのお母さんが見えた。
次々風景が変わるな…。
もう夢の中にはいないと分かっているのに、まだ自分は水に浮かんでいて、空の風景を眺めてる気分だった。



