「お前、何で大人しく追い出された?」
独り言のように呟いた先輩の疑問は私にとって意外なものだった。
「…何でそんなこと?」
「お前のこと良く知らねぇけど、少なくとも姫になった女をいじめるような奴に見えない。」
…それを今言うの。
あの時言ってくれてたら追い出されなかったかもしれないのに。
と思ったけど、すぐ先輩にとって下っ端が1人、しかも戦力にならないのがいなくなったところでマイナスにもならないのか、と1人納得してしまう。
「私、少しだけでも夜鴉に入れて良かったです。喧嘩は合わなかったけど、私にとって憧れだったんです。ヤンキーという世界が少しだけでも知れたのは嬉しかったです。」
きっと夜鴉だから下っ端になれたんだ。
他の暴走族だったら門前払いなんだろう。
私が夜鴉に入った時の女子のざわめきで、私が少しおかしいんだと知った。
"夜鴉に下っ端として入ってる変な子"だと女子からは遠目に見られてた気がする。
「言ってなかったですけど、お世話になりました。怪我しないように頑張ってください。」
そう言いながら、そういえば夜鴉は大きな喧嘩があるって誰か言ってたよな、と思い出す。
きっと無事に終わったんだとクラスの男子を思い出す。誰も怪我はしてなかった。



