何も言わないので、OKだと受け取り、ぐずぐずのままソファに座ってる男子の前に立つ。



涙でびしょびしょの手を握り、力を込めたはずが、彼の肩に届いたのはポンッと優しい拳だった。

それでも、何度か殴ってやる。


…彼は何も悪くないはず。
私が勝手に刺さって泣いてるだけ。


そう思いながらもいつの間にか拳は両手に増えて、ポンポンと硬い胸を殴ってた。


「…私のヒーローなのっ、王子様なのっ。」

涙で見えないのを良いことに、ぐしゃぐしゃの顔も隠さずに八つ当たりしてた。






どのくらいそうしていたのかは分からない。
気づいたらソファに横になってた。


泣いたせいで頭が重く、瞼も重い。
…これは、最悪だ。



ゆっくり体を起こすと、誰もいないみたいだった。
あの男子、絶対迷惑だったよね…。


突然泣き出した挙句に八つ当たりされたんだ。
それも知らない女子に。



いないうちに帰ろうとしたら、何かが手に当たって、ソファを見たらタオルと紙があった。

タオルは冷たい。


顔に手を当ててみると、目の辺りが少し冷たい気がした。


…迷惑かけたのに、冷やしてくれてた?

それに、この紙




『お子ちゃまでも良いんじゃね。だけど、女はヒーローじゃなくてお姫様に憧れるもんだぞ。』