れんれんと恋するための30日




「幸、今日はバイトある?」


「ううん、今日はない。なんで?」


「体育祭も近いから、放課後も一緒に走らないかなって思って」


「うん、走る。
走りたい」


「了解。じゃ、漫研にちょっと顔出してから、一緒に走ろう」


漫研の部室で、福は道の漫画を見ている。
道は時間がないと言いながら、憑りつかれたように漫画を描いていた。
福は道に透子の気持ちを教えてあげたいと思うけれど、もしかしたら、道はずっと前からそんな事は知っているのかもしれない。


「幸、行こうか」


拓巳が帰る準備をしながら、そう言った。


「うん」


福はリュックを背負って、拓巳の元へ急いだ。
そして、二人は辺りが暗くなるまでずっとグランドを走った。

走ることがこんなに楽しくて気持ちがいいことを、福は、改めて実感する。
私は走ることが好き。
蓮に会いたいためだけにこの世界へ戻ってきたけれど、私はたくさんの大好きな事に巡り合えた。

とても些細でちっぽけな日常かもしれないけど、でも、私にとってはかけがえのない大切な日々。
二度と味わえない生活を、それを知ることができただけでも、今、ここにいる意味は果てしなく大きい。