れんれんと恋するための30日



福は蓮に声をかけることができない。
透子の存在を間近で感じた福は、透子への敵対心が芽生えるどころか女性としての透子への憧れで、不思議と心の中は満たされている。

それに、蓮は福の事を気づかずに透子と話し続けている。
二人が福の前を通り過ぎても、蓮は全く気づかない。
福は二人と少しだけ距離を置いて、駅まで歩いた。


「幸~、ゆきちゃ~ん」


後ろから、幸を呼ぶ声がする。
福が振り返ると、ミッチーが手を振りながら福の元へ駆けて来るのが見えた。


「ミッチー、今日、部活は?」


「そっちこそでしょ?」


「私は、今日、バイトなんだ」


すると、ミッチーは前を歩いている蓮に気づいたのか鼻で笑った。


「幸、大石蓮が好きなの?」


「…うん」


突然の質問に、さすがの福も驚いた。
ミッチーは素知らぬ顔で、前を歩く二人を見ている。


「幸、あの娘から大石蓮を奪っていいよ」