「存在を忘れたなんて一言も言ってない。
ちょっとの間だけ忘れたって言っただけ」
「そんなの一緒やん」
「一緒じゃない!」
福はまたその友達に詰め寄ろうとした。
「幸、もうやめろ」
そう言って、福の肩をつかんだのは拓巳だった。
「だって、拓巳…」
「いいから」
拓巳は皆が見ている場所から、幸を教室の隅に連れて行った。
蓮はそんな二人をぼんやりと見ている。
くだらない…
俺は置き去りか?
「蓮、行くぞ」
「おう、あ、ちょっと待って」
蓮は近くにいた幸のクラスメートを捕まえてこう聞いた。
「さっきの拓巳って、名字は何て言うの?」
「安藤拓巳の事?」
「安藤ね… サンキュ」
蓮は初めての感情に戸惑った。
幸をあいつに近づけたくない…



