そして、幸は眠って浅い夢を見ているような、そんな感覚で自分の目に映る福の全ての出来事を見ていた。
福が感じる喜びや悲しみは、当然、幸も同じように感じている。
福の目を通すと、いつもの何気ない日常がキラキラした希望に満ち溢れた日常になる。
今も、拓巳と走っている福の感情が、ドッと幸に押し寄せている。
幸は、福以上に泣いた。
走れない可哀想な福をいつも見てきたから…
一卵性双生児といっても、性格は福の方が活発だった。
病気がちだったけれど好奇心旺盛だった福は、友達とかけっこをしたり、鬼ごっこをしたり、そういう普通の日常をいつも夢見ていた。
一度、福は父親におぶってもらい、私や蓮達と鬼ごっこをしたことがある。
でも、その日の夜、福は珍しく泣いた。
「福も自分の足で走りたい」と。
幸にとって、福に体を貸すということに未だ慣れないのはそういうことだった。
幸が知らなかった福の苦しみや悲しみも、全て共有しなければならいから…



