れんれんと恋するための30日



福は、待ち合わせの時間より早く校庭に着いた。
朝の校庭は、もうすでに賑わっている。
運動部の朝練や、吹奏楽部の個々の練習や、高校生のあるべき姿がここにある。皆、活気にあふれてて楽しそう。
福はそういう場所に自分がいることが、嬉しくてたまらなかった。


「おはよう」


遠くで拓巳の声がする。


「幸、早いな~」


拓巳はメガネを外している。
福は拓巳の涼し気な目元に少しドキッとした。
蓮とはタイプは違うけど、拓巳はイケメン男子だった。


「おはよう」


今度は梨華の声がする。
梨華はすぐに拓巳の異変に気づき、冷やかし始める。


「幸もメガネをとって、次は拓巳もか~~」


「走る時に邪魔だからだよ。そんなんじゃないから」


福はこんな素敵な時間を過ごせている今を、幸に感謝した。


「そろそろ始めようか」


拓巳はそう言うと、福の腕をとって校庭へ走り出す。