「幸、最近、スマホ見てる?」
拓巳は手を止めて、幸の目を見て聞いた。
「スマホ?
あ、ううん、見てないかも、ほら、バイト始めてから忙しくて」
「そうだろうと思ったけど、ま、元々、あんまりスマホ見ないタイプだもんな」
「漫研の連絡事項をLINEグループで回してるのだけはちゃんと見てほしい。
あと、明日からの朝練についても、梨華に連絡とってからまたLINEで回すから」
福は、幸のリュックのポケットからスマホを取り出した。
福には馴染みのない携帯電話だけど、今の高校生には必需品だ。
福はスマホを開き、暗証番号を適当に誕生日の日付を入れてみた。
待ち受け画面を見て、福は息を飲んだ。
幸の16歳の誕生日のバースディケーキの写真だった。
“ゆき&ふく、16才、おめでとう”
白のチョコレートのプレートに大きくそう書かれてある。
福は拓巳が目の前にいるのに、溢れる涙を止める事ができなかった。



