れんれんと恋するための30日



「幸、最近、スマホ見てる?」


拓巳は手を止めて、幸の目を見て聞いた。


「スマホ?
あ、ううん、見てないかも、ほら、バイト始めてから忙しくて」


「そうだろうと思ったけど、ま、元々、あんまりスマホ見ないタイプだもんな」


「漫研の連絡事項をLINEグループで回してるのだけはちゃんと見てほしい。
あと、明日からの朝練についても、梨華に連絡とってからまたLINEで回すから」


福は、幸のリュックのポケットからスマホを取り出した。
福には馴染みのない携帯電話だけど、今の高校生には必需品だ。
福はスマホを開き、暗証番号を適当に誕生日の日付を入れてみた。

待ち受け画面を見て、福は息を飲んだ。
幸の16歳の誕生日のバースディケーキの写真だった。

“ゆき&ふく、16才、おめでとう”

白のチョコレートのプレートに大きくそう書かれてある。
福は拓巳が目の前にいるのに、溢れる涙を止める事ができなかった。