「ミッチー、はい、原稿持って来たよ」
福は拓巳に笑いかけた後、ミッチーの元へ駆け寄った。
「幸ちゃん、やればできるじゃない、ありがとうね。
でも、僕は、これからちょっと用があってすぐ出なきゃならないんだ。
これはちゃんともらっとくね」
ミッチーはそう言うと、拓巳に何かを頼んで急いで部室を出て行った。
「ねえ、拓巳、ミッチーって何者なの?」
そんな質問をする幸の変わりように、拓巳は大声で笑った。
「さすが、幸、やっと聞けるようになったな。
皆、興味津々なのに不思議と何も聞けないミッチーの素性を…」
拓巳はそう言っただけで、また漫画を描き始めた。
「何? 何なの?
聞きたいし、知りたい」
福は拓巳が座っている机の前に椅子を持ってきて、そこに腰かけた。
「じゃ、明日から一緒に走るって約束して」
福は大きく頷いた。



