「うん、行きたい。
れんれん、約束だよ。
絶対、他の予定入れちゃダメだからね。
私を絶対、海に連れて行って…」


福は嬉しくて涙がこぼれ落ちたことさえも気づかなかった。
神様との約束に涙を流さないことも含まれていたけれど、この涙は嬉し涙だからきっと神様も許してくれる。

蓮と一緒に海に行ける…
福は、飛び上がりたいほど嬉しかった。


「れんれん、その日、泳げる?」


「はあ? 幸、それは無理だよ。
泳いでる人なんていないよ、絶対」


蓮はまた嫌な予感がしていた。
この流れじゃそれでも泳ぎたいって言うに決まってる。
それだけは、絶対阻止するんだぞ、蓮。


「大丈夫だよ。
ちょっと冷たくても泳げるよ。
ねえ、一緒に泳ごう、ね?」


「え~、それはちょっと」


「れんれん、幸の一生のお願い」


蓮は幸の目を見ないようにした。


「お願い」


蓮の顔を覗きこむ幸の愛らしい顔を見たら、もう何でもしてあげたくなる。
俺は、やっぱり、幸に、魔法か何かをかけられたのかもしれない。


「分かったよ…」


マジか…?

蓮は自分の愚かさに小さくため息をついた。