「れんれんが、幸のものだったらよかったのに…
幸の夢は、れんれんと一緒に海に行くことなんだよ」
「夢って大げさだな。
海ならいつでも行けんじゃん」
「でも、夏の季節はもう終わるでしょ?
今年の夏に行きたかった…」
たまに、蓮は幸の会話についていけなくなる時がある。
今も何を言っているのか訳が分からなかった。
「もう、9月だしな。
ま、でも、昼間は夏のようにまだ暑いか…」
「じゃ、9月中に海に連れて行ってくれる?」
蓮は幸のこの表情に本当に弱い。
子猫のような泣きそうな顔。
しっかりと捕まえておかないと、どこかへ飛んで行ってしまいそうなそんな気持ちにさせる。
蓮はスマホを取り出し、自分のスケジュールをチェックした。
「9月の後半に長い連休があるか…
で、そこに体育祭の代休がくっつくから、この連休明けの木曜日なら行けるかも。
幸はどう?」
「いつ?」
「9月24日の木曜日」
福は驚いた。
この日は、福と幸の誕生日の一日前。
そして、福がこの世を去った日だった。



