れんれんと恋するための30日



「幸、俺が仕事に専念してるのは分かるだろ?」


「ニコニコして、僕を見て~って顔してるじゃん」


幸は口を尖らせてそう答えた。


「営業スマイルだよ。
例えば、お客様が俺にまた会いたいって思って店に来てくれれば、店の売り上げが上がるわけで、だから、店長は絶対に俺をホールに出す」


「ふ~ん」


蓮はこの幸の表情にいつも戸惑ってしまう。
何かを企んでいる悪戯っ子のようだ。


「あ、れんれん、さっきちゃんと答えたからご褒美ちょうだい」


やっぱりな…
ちゃっかり催促してくるところが抜け目ない。


「何がいい? 
でも、俺を困らせない程度の物にしてね」


今度は、子猫のような切ない瞳で俺を見る。


「今度の週末にれんれんとデートがしたい」


「週末は夜はバイト入ってるし、昼は…」


「昼は?」


「昼は、透子と会う約束があるんだ」


幸は透子の名前を聞いた途端、沈んだ表情になった。


「週末っていっても、土曜日も日曜日もあるじゃん。
どっちもだめ?」


「うん、どっちも用事が入ってる、ごめん」


福にとっての週末は、たったの四回しかなかった。
その内の一回は、体育祭でつぶれてしまう。

福は、蓮とデートがしたかった。
一度も見たことがない海に蓮と行きたい…
でも、福は焦る気持ちを抑え、笑顔で蓮を見た。