「れんれんは、あの席とその席、それとあそこの席にも近づいちゃダメだからね。
分かった?
ちゃんと仕事をやること。
ニヤニヤしない。
女の子とぺちゃくちゃお喋りもしないこと」
蓮はうすうす分かっていた。
張り切って働く幸の魂胆を。
とはいえ、今の客は蓮が目的の女性がほとんどなのに、その客を幸一人で応対しようというところで間違っている。
「蓮く~ん、ちょっといいですか~?」
蓮は若い女子高生の二人組に呼ばれた。
「今日は、この子の誕生日なんです。
このパンケーキと、蓮君と一緒に写真が撮りたいんですけど」
「いいですよ、僕でよければ」
蓮はにっこり微笑んだ。
そして、横を向くと、幸もそこにいて一緒に笑っていることに驚いた。
「私も一緒にいいですか~?」
幸は極上のスマイルで、その女子高生を威嚇している。
「…あ、はい、一緒にどうぞ」
そして、従業員二人ともが、その写真に一緒に収まった。
蓮はこの先が思いやられた。
幸って、こんなに俺の事が好きだったっけ?
蓮は以前の幸を考えれば考えるだけ、今の状況が不思議に思える。
幸が違う人間になってしまったのは間違いなかった。



