れんれんと恋するための30日



「れんれんは、あの席とその席、それとあそこの席にも近づいちゃダメだからね。
分かった?

ちゃんと仕事をやること。
ニヤニヤしない。
女の子とぺちゃくちゃお喋りもしないこと」


蓮はうすうす分かっていた。
張り切って働く幸の魂胆を。

とはいえ、今の客は蓮が目的の女性がほとんどなのに、その客を幸一人で応対しようというところで間違っている。


「蓮く~ん、ちょっといいですか~?」


蓮は若い女子高生の二人組に呼ばれた。


「今日は、この子の誕生日なんです。
このパンケーキと、蓮君と一緒に写真が撮りたいんですけど」


「いいですよ、僕でよければ」


蓮はにっこり微笑んだ。
そして、横を向くと、幸もそこにいて一緒に笑っていることに驚いた。


「私も一緒にいいですか~?」


幸は極上のスマイルで、その女子高生を威嚇している。


「…あ、はい、一緒にどうぞ」


そして、従業員二人ともが、その写真に一緒に収まった。

蓮はこの先が思いやられた。
幸って、こんなに俺の事が好きだったっけ? 

蓮は以前の幸を考えれば考えるだけ、今の状況が不思議に思える。
幸が違う人間になってしまったのは間違いなかった。