れんれんと恋するための30日



「幸、そんないい話の後で悪いんだけど、僕達の漫画はどうなってる?」


突然、話しかけてきた人を見て、福は固まってしまう。
その人は男の人? ううん、女性かもしれない。
肩より下まで伸びた髪、黒いカチューシャで上げた前髪、そして化粧してる?
真っ白な肌に、ピンク色のグロスを塗った唇。
福がぽかんとしていると、その人は近づいてきて福を自分の机へ連れて行った。


「この後、考えてきてくれた?」


「この後?」


「もう、忘れるとかあり得ないからね。
僕は、早く漫画を描きたくてウズウズしてるのに」


福は意味が分からない。
でも、その前に、この美しい不思議な人に目が釘付けだった。


「僕のパートナーは、本当におかしくなっちゃたの?」


「幸、早くこの物語を完結しなきゃ、ミッチーが家まで押しかけてくるかもしれないよ」


その声は、拓巳の声だった。
福はその場に拓巳がいることに初めて気がついた。
拓巳も漫研部員だった。

そして、このミッチーは幸のパートナー?


「幸が早くストーリーを作らないから、僕はいつまでたっても漫画が描けないんだ」


ミッチーは怒っている。
福は、とりあえず、話を合わせることにした。


「ミッチー、ごめんなさい。
今日も、まだ考えがまとまらなくて。
明日には、必ず提出できるように頑張ります」


今夜、幸に考えてもらわなきゃ。
私にはこの手の才能なんてないはずから…