幸は、きっと夏休みに、頭に大きな衝撃を受けたに違いない。
じゃないと、そんな愛してる?なんて、こんな場所で真顔で聞けるはずがない。
「愛してるって、どうなんだろ、分かんないよ。
でも、好きだよ…
それじゃだめなのかな?」
幸は真っ直ぐに蓮を見ている。
「私は、れんれんとつき合いたい…
だって、愛してるんだもん」
「幸、ちょっと待って、そんなの初耳だし。
幸が俺を好きとか、絶対あり得なくね?
福ならまだしもさ」
福は小さい頃の自分を思い出していた。
“ふくはれんれんが好き“
蓮が遊びに来るたびに、ベッドの上からいつもそう言った。
蓮は覚えてくれていた…
「もし、福が生きてたら、れんれんは福を好きになってくれた?」
福は我慢ができずに、蓮にそう聞いてみた。
すると、蓮は沈んだ表情を浮かべてこう言った。
「そんな事聞いてどうすんだよ。
もう、福はここにはいないのに…」
「いるって言ったら…
幸と福は双子なんだよ。
福もここの中にいる」
そう言って、福は自分の胸を押さえた。
忘れないで、福の事をどうか忘れないで…
福はこみ上げる涙を必死に飲み込んだ。
泣いたらダメ…
「そうだな…
福が生きてたら、絶対好きになってた。
っていうか、今でも好きだよ。
昔も今も、福の事は愛してる…」
心の奥の方で、幸は嬉しそうに笑っている。
福の事を思い出しているのか、半分泣いてるようにも見えるけど。



