れんれんと恋するための30日



幸は、きっと夏休みに、頭に大きな衝撃を受けたに違いない。
じゃないと、そんな愛してる?なんて、こんな場所で真顔で聞けるはずがない。


「愛してるって、どうなんだろ、分かんないよ。
でも、好きだよ…
それじゃだめなのかな?」


幸は真っ直ぐに蓮を見ている。


「私は、れんれんとつき合いたい… 
だって、愛してるんだもん」


「幸、ちょっと待って、そんなの初耳だし。
幸が俺を好きとか、絶対あり得なくね? 
福ならまだしもさ」


福は小さい頃の自分を思い出していた。

“ふくはれんれんが好き“

蓮が遊びに来るたびに、ベッドの上からいつもそう言った。
蓮は覚えてくれていた…


「もし、福が生きてたら、れんれんは福を好きになってくれた?」


福は我慢ができずに、蓮にそう聞いてみた。
すると、蓮は沈んだ表情を浮かべてこう言った。


「そんな事聞いてどうすんだよ。
もう、福はここにはいないのに…」


「いるって言ったら…

幸と福は双子なんだよ。
福もここの中にいる」


そう言って、福は自分の胸を押さえた。
忘れないで、福の事をどうか忘れないで…

福はこみ上げる涙を必死に飲み込んだ。
泣いたらダメ…


「そうだな…
福が生きてたら、絶対好きになってた。
っていうか、今でも好きだよ。

昔も今も、福の事は愛してる…」


心の奥の方で、幸は嬉しそうに笑っている。
福の事を思い出しているのか、半分泣いてるようにも見えるけど。