家族でケーキを食べ終えてくつろいでいる時に、玄関のチャイムが鳴った。
福が玄関のドアを開けると、小さな花束を持った蓮が立っている。
「幸、改めて、誕生日おめでとう」
福は笑った。
だって、朝も学校でも帰りも蓮とずっと一緒だったから。
「ママ~、れんれんが来てくれたから、ちょっと部屋で話してもいい?」
「いいわよ~」
蓮は久しぶりに幸の家へ上がった。
あまりにも小さい時の記憶のために、断片的にしか覚えていない。
でも、ここに来れば福の存在を感じる。
リビングへ続く廊下にも、階段にも、福との思い出はたくさん残っていた。
「幸の部屋へ、ようこそ」
幸の部屋は女の子の部屋だった。
ベッドがあって、小さなソファがある。
カーテンはブルーと白のドット柄で、ベッドカバーもお揃いだ。
蓮はその可愛らしいソファに座ると、少し胸が切なくなった。
この部屋はよく覚えている。
昔はここに二段ベッドが置いてあった。
幸が上で福が下。
そして、お揃いの学習机が並んでいた。
あの机とベッドはどこに行ったんだろう…
福が亡くなってからこの部屋で幸がどう過ごしてきたかを想像するだけで、蓮は胸が苦しくなる。



