福は力なく頷いた。
福は幸のこれまでの出来事を何も知らない。
「福が死んじゃってから、幸は福の事を一切言わなくなってただろ。
だから俺はすごく驚いて、それで幸の力になってあげたいって思った」
蓮は幸を強く抱きしめた。
福を失くしてからの幸の苦悩を一番よく知ってる。
「それで一緒に叫んだんだよな。
ふく~~、いる~~?って。
幸は、ずっと、ふく~って呼んでた、泣きながらずっと…」
蓮は自分の胸で泣きじゃくる幸を見て、少し後悔していた。
やっぱりここに連れてくるべきじゃなかったのかもしれない。
こんなに明るくしているけれど、幸の中で福を失った悲しみはまだ癒されていない。
「幸、ごめん、こんなとこに連れてきて」
福は首を横に振りながら背伸びをして、蓮の首にしがみついた。
「そんなことないよ…
福の事を覚えていてくれたんだ、それだけで嬉しい…」
蓮はもう一度、幸を強く抱きしめた。
俺だって福をずっと覚えてる。
幸が福を愛したように、俺だって福を愛してたんだから…



