れんれんと恋するための30日



次の日、福は蓮に連れられて回転寿司に行った。

唯一、福が小さい頃の家族での外食で覚えているのが、この回転寿司だった。
ぼんやりとした記憶の中では、家族四人の幸せそうな笑顔が見える。

今日は大好きな蓮と一緒に回転寿司に来た。
蓮は今日は俺のおごりだって張り切っている。


「でも、なんで回転寿司なの?
幸の願いだよ…
願いなら、回転寿司じゃなくて銀座の一流寿司とかだろ?」


蓮は赤身を何個も食べている。
赤身がよっぽど好きらしい。


「だって、一流寿司屋だったら、れんれんおごれないでしょ?
だから回転寿司にしてあげたんじゃん」


「あ、そうなんだ。
そうだよな。
今の俺には絶対無理だし、高校生二人組じゃそんな店にも入れないか」


福は可笑しかった。
真剣に考えている蓮は本当に優しい男の子だ。


「じゃ、俺が社会人になったら、連れて行ってやるよ。
あと、十年くらいかな?
待てる?」


「待てないよ」


福は笑顔でそう答えた。


「なんでだよ」


蓮は不満そうな顔をしている。


「理由はないけど…
今日の回転寿司でいいの。
これがいいの…」