れんれんと恋するための30日



幸と蓮はファミレスを出て、いつもの電車に乗った。
平日のこの時間帯の電車の中は、会社帰りのサラリーマンで溢れかえっている。

福はつり革につかまって、窓に映る蓮をずっと見ていた。
蓮は本当にカッコいい。
福は子供の頃の蓮しか記憶にないけれど、でもそんなに変わってない。
背が伸びて大人の顔になっただけ。
私が大好きだった蓮は今もここにいる。

すると、駅の改札を出たところで蓮は急にいなくなった。
福は駅前のロータリーで蓮を捜していると、自転車に乗った蓮が手を振りながら近づいてきた。

子供の頃、福は家の前の道で蓮や幸が自転車に乗って遊ぶのを、家の玄関に座ってずっと見ていた。
そんな福を見かねた蓮がある日、福にこう言ってくれた。


「福、俺がもう少し大きくなってもっと自転車が上手くなったら、福を後ろに乗せてあげるから。
一生懸命練習するから、それまで待ってて」


でも、福は待てなかった。
蓮に永遠のさよならをしてしまった…


「幸、ほらここに乗って。
ちゃんと俺の腰をつかまないと落ちちゃうからな」


「うん」


福は蓮の腰にしがみついた。


「出発進行~~」


れんれんは私が泣き虫になったって言うけど、しょうがないじゃん。
ずっとずっと夢見てたんだから…
こんな風に風を切って自転車に乗ることを…
れんれん、子供の頃の約束を覚えてる?

そして、約束を守ってくれて本当にありがとう…