先生は、忙しそうに動きながらそう言った。
「俺がちゃんと幸を見てるから、先生、行ってきていいよ」
蓮はそう言いながら、幸の手をしっかりと握る。
福は真っ暗闇の中を、枯れ葉のようにグルグル回っていた。
もう、分かっている…
これは偶然ではなく、必然でこうなったことを。
すると、遠くから、懐かしい声が聞こえてきた。
やっぱり、そうだ、神様の声だ。
渦の中でグルグル回っている福の体が、しばらく宙に浮いているような感じがした。
“福、よく聞きなさい。
あなたは、私との約束を守れなかったのではないですか?
あなたは、私に、大石蓮とつき合うために一か月を下さいと言った。
あなたの目的は、大石蓮と恋人同士になることで、30日でそれを絶対に達成することです。
私の反対を押し切ってここへ来たことを、その時に、私から出された条件を覚えていますか?”
“…はい”
“暗唱してごらんなさい”
“神様が約束を破ったとみなしたら、即、この場所から離れること”
福は、泣きそうな声で答えた。



