れんれんと恋するための30日



福はバトンを受け取ると、必死に走った。

こんなに大勢の人に見守られ、期待され、応援してもらっている。
これが生きているってことなんだ…
いつも色んなことを挑戦したかった子供時代。
でも、私はが生きている時はそれは叶わなかったけれど、今こうして、幸の体を借りて最高の瞬間を生きている。

あ、ママとパパだ。
応援に来てくれたんだ…

半分が過ぎて拓巳の姿が目に入った時、また福の体に異変が起きた。

もう、そこに拓巳は見えている…
福は急に襲ってきた心臓の痛みと必死に戦った。
とにかくこのバトンを、拓巳に渡さなきゃ…

福はスピードは出せなかったが、それでも前へ前へと進んだ。
赤組のハチマキをつけた子に追い越されたのが分かった。
そして、白組のハチマキの子も、福を追い越そうとしている。

福は目の前の校庭が歪んで見え始めた。

もう、私、ダメかもしれない…
でも、その先には、拓巳が私を呼んでいるのが見える。
拓巳、ごめんね…

福はやっとの思いで拓巳にバトンを託した。

その先の拓巳の姿はもう分からない。
優勝したのどうかも、福には何も分からなかった…