れんれんと恋するための30日




「透子さん」


福は透子を見つけて声をかけた後、すぐに、立ち止まった。
透子の前を蓮が歩いていたから。


「幸ちゃん、どうしたの?」


福は何も言えずにいた。
蓮を目の前にして、フォークダンスの事を言えるはずがない。


「ごめんね。何でもなかった」


福が苦笑いをしながらその場を立ち去ろうとした時、蓮が福の手を掴み、自分の方へ引き寄せた。


「お前、ちょっと調子が悪いだろ?
さっきのかけっこの後、顔色悪かったからさ。
大丈夫か?」


突然の蓮の優しさに、福の胸の中がざわつき始める。


「大丈夫だよ。
見ててくれたんだ、嬉しい、ありがとう」


蓮は「無理すんなよ」と一言だけ言って、その場からいなくなった。


「幸ちゃん?」


福は現実に引き戻される。

透子さん、私、やっぱりれんれんが好き…
れんれんに会うために、この世界にやって来たから。
透子さん、れんれんの気持ちを、私に下さい…

でも、言えるはずないよね。
だって、透子さんには何も関係ないことだから…