れんれんと恋するための30日



福と拓巳は、次のダンスに備えて休憩をした。
福は、ダンスは全く自信がなかった。
練習も一回しかなくて、予行練習でも実践はなかった。

ダンスは恒例の種目らしく、拓巳は一年生の時に踊っていた。
だから、きっと、踊れないのは、一年生以外では福と転校生のミッチーの二人だけだった。
すると、ミッチーが二人の前へやって来る。

「何ですか? 
僕を見て吹き出すなんて」


「ミッチーの体操服姿、いつ見ても似合わないから」


道の長い髪と真っ白い肌は、この体育祭でもひと際目立っている。
道は全く気にしてない様子で、福と拓巳に、こそこそと何かを教えてくれた。


「え?何? ミッチー、よく聞き取れないよ」


福がそう言うと、道はしゃがんではっきりとした声で、もう一度言った。


「来月の10日に、フランスに帰ることになった。
日程が決まったから、漫研の部長と副部長に伝えに来ただけ」


「もちろん、すぐ帰ってくるよね?」


拓巳がそう聞くと、道はおどけた顔をして首を傾げる。


「希望はね。
でも、そればっかりは行ってみないと分からないんだ」