結局、福は二着だった。

最後の一息というところで、福は体の異変に気付いて失速した。
幸に借りているはずの体なのに、ゴールの手前で急に心臓が痛んだ。
そんな大きな痛みではなかった。
でも、福に嫌な予感がつきまとう。

もし、幸の心臓が、以前の私の心臓に戻ってしまったら…
そんな事は絶対にないと思うけど、でも、もし、神様が怒っているのだとしたら…
そんな不安が、福をじわじわと苦しめる。

ううん、大丈夫、この痛みはただの偶然…
大丈夫だよ、福…

福はそうやって自分自身を慰めるしかなかった。


ゴールの手前で、蓮は真っ青な顔色に変わった幸の異変に気付いた。
きっと、幸の中で何かがあったに違いない。
でも、蓮は幸の元へ行かなかった。
幸が求めているのは俺じゃない。
透子と幸の間で揺れ動く優柔不断な俺には、幸の元へ駆けつける資格なんてない。

やっぱり、最初に駆け寄って来たのは拓巳だった。
心配そうに幸の顔を覗きこんで、幸の乱れた髪を優しく耳にかける。
蓮はそんな二人を見て、吐きそうなくらい気分が悪くなる。

俺の幸に触るんじゃねえ。
また触ったらぶっ飛ばす…