すると、私たちのところへ、成瀬くんもやって来た。

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫……」

 あれ? なんか凄くジーっと成瀬くんに見つめられてるような……。

(もしかして、何か疑われて……る?)

 私は萌の仕草を誰よりも近くで見てきたから、そのあたりの真似は完璧なはず。
 声のトーンだって、「紗英」のときより少し高く話してるし、語尾とかはほぼ同じだからそこまで気をつけることはない。

 「紗英」の近くにいた茜も、「萌」の近くにいた雄輝くんも、私が本当は「紗英」なのでは? なんて疑ってる感じはない。

 でも妙に成瀬くんは私のことを凝視してくるのだ。
 あまり気にしていると、ボロが出そうなため、気にしないようにした。