「気づかれましたか? 以前匿名で贈られてきた品なんです」

「あっ、そうなんだ? へーー? そう……匿名で贈られてきたの…………」

「ええ。ヴィヴィアン様からの贈りものだろうと確信し、大事に使わせていただいてました」


 ウッ! と思わず息を呑む。
 それは2年前のエレン様の誕生日、わたしが贈った柱時計だった。シックかつエレガントで、エレン様のイメージに合うものを職人さんにデザインしてもらった。エレン様はきっとたくさんプレゼントをもらうから、宛名なんて確認しないだろうと高を括って。


(なんでバレたんだろう?)


 首を傾げるわたしに、エレン様が笑う。


「さて、そろそろはじめましょうか」

「うん、お願い」


 推し語りが長くなってしまったけど、これこそが今日の来訪の目的。
 エレン様はわたしの手から恭しくユリの花束を受け取った。