屋敷に入ってすぐ、わたしはエレン様の私室へと案内された。
 ほんの1〜2分の道中、息を吸うたび、なにかを見るたびに心の声が爆発して、ものすごいお祭り状態だったんだけど、それを描写してたら話が遅々として進まない。

 だけど、これだけは声を大にして言わせてほしい。
 エレン様の私室、最高だった。

 エレン様の香りしかしないし、室内すべてがエレン様のものだし。オシャレで、センス抜群で、シンプルなのにゴージャスで。存在がそのままエレン様だ。極限までエレン様要素をつぎ込んだわたしの推し部屋とて所詮はまがい物。ここでは完全に霞んでしまう。


(よし、帰ったらすぐに再現しよう)


 わたしの部屋の片隅に、ミニチュアのエレン様の部屋を作るんだ。
 間取り、床板の質感はもちろん、カーテンや壁紙の色合い、調度品まですべてを完璧に再現する。そのために、この部屋のすべてを目に焼き付けなければ。


「あっ、これ……」


 そのとき、ふと見覚えのあるものが視界を捉える。思わず近づいてみたら、エレン様がふふ、と目元を和らげた。