ああ、こういうとき本音をそのまま口にできたらどれほど楽だろう? 皇女ヴィヴィアンという生き物は、わたしのような心の声がうるさいタイプの人間からすれば、とってもとっても生きづらい。言いたいことの半分ぐらいしか口にできないし、エレン様に対して敬語だって使うことができない。エレン様は本当はこんな口調で応対していい相手じゃないのに。


(その点、リリアンになれる時間は本当に貴重だなぁ)


 それはもう一つのわたしの姿。わたしが一番わたしらしくいられる場所。二年前、魔術師団の近くに作ったカフェでのわたしだ。

 元々そのカフェは、寄付とか物資支援以外の超個人的な推し活費用を確保するためにはじめた事業だった。いくらわたしが自由に使えるお金であっても、絵師を雇うのとか、エレン様のテーマソングを作ってもらうのとか、国民みんなにエレン様を知ってもらうために新聞の紙面を買い取ったりとか、そういうことに公金をジャンジャカつぎ込むのは気が引けたんだもの。気持ちよくお金を使うため、経営に手を出すのはいわば当然の流れだった。

 そこでは思う存分エレン様への愛情を形にできるし、思ったことを思ったとおりに発言できる。敬語だって使わなくていいし、平民みたいに振る舞えるし、すこぶる楽だ。

 もちろん、警護の関係とか、わたしが不在時のお店の管理とか、色んな人に迷惑をかけてるのはわかってるんだけど! それでも、溢れかえるパッションを昇華させられる場所を作ってもらえて、本当によかったと思っている。