馬車で進むこと数分、ようやく屋敷に近づいてきた。

 昨今はゴテゴテとした複雑な造りのタウンハウスを自慢とする貴族たちが多いなか、やはりエレン様は別格だった。落ち着いた色合いのレンガ造りの建物は、無駄な部分を削ぎ落としていて、シンプルだけどとても上品な印象を受けるし、エレン様にとても似合っている。飾らない美しさとでもいうのだろうか? エレン様を頂点とした至高の美がそこにある。わたしが想像したとおり。――――ううん、想像以上。本当に惚れ惚れしてしまう。


「いらっしゃいませ、ヴィヴィアン様」


 そして! 推しの美しさたるや! もう筆舌に尽くしがたい。
 どうしよう。やっぱり今日はわたしの命日だったみたい。
 だって、エレン様が美しくて。ビックリするぐらい美しくて。リアルに心臓がとまってるんだもの。


(っていうか私服っ! エレン様の私服だ〜〜〜〜!)


 この間の夜会で見た盛装ともまた違う。あのときよりも少しラフで、けれど上品で、優雅で、縋りつきたくなるような色気を醸し出していて、ダメだ。動悸がすごい。立っているのが奇跡に近い。
 普段は黒のローブだから、ベージュのロングジャケットがビックリするぐらい新鮮だ。どこで購入しているんだろう? 同じものを入手したいから、あとでヨハナに調べてもらわなきゃ――――いや、頼まなくてもヨハナなら既に調べているかも。