「ヴィヴィアン様、どうか……どうか、わたくしたちの頑張りに思いを馳せてください。ヴィヴィアン様がエレン様のご自宅を訪問する瞬間を、わたくしがどれほど! どれほど心待ちにしていたか! ここで引き返されてしまったら、わたくし……わたくしは…………」

「ちょ、ごめんってヨハナ! そんなふうに想ってくれて嬉しいって思っているわ。本当よ?」


 泣きじゃくるヨハナを慰めつつ、わたしは静かに息をつく。
 ヨハナはジーンとは少し違って、わたしとエレン様が二人で揃うことに妙なこだわりがあるらしい。その根底に『わたしに喜んでほしい』って感情があるのは間違いないけど、なんとなくそれだけじゃない感じがしている。


(行くしかないか)


 女は度胸。
 体が震えるのを馬車のせいってことにして、わたしは大きく深呼吸をした。