(ああ、この複雑な想いを誰かに共感してほしい)


 わたしは同担大歓迎。どこかに誰かいないだろうか? わたしと同じレベルでエレン様を称え、エレン様を愛し、エレン様を一緒に支えてくれる天使のような人が。そしたらきっと、わたしとエレン様との結婚を反対してくれるだろうに。……いや、無理か。わたし、皇女だし。不敬と罰せられるリスクを犯してまでそんなことを口にできるのは、きっと筋金入り。そんな人、いたら既に出会えていただろうから。


「ヴィヴィアン様、そろそろ馬車が到着します。降車のご準備を」

「ああ、そうね。ありがとう、ジーン」


 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。エレン様のご自宅はもうすぐそこだ。


(どうしよう。改めて緊張してきた)


 全身の血がざわざわと騒ぐ。手が汗ばむ。喉が渇いて上手く呼吸ができないほどだ。


「ねえ、ヨハナ……わたし、本当にこのままエレン様のご自宅にうかがって大丈夫なの? なにかの間違いじゃない? 今から引き返したほうがいいのかも……」

「ヴィヴィアン様、緊張なさっているのはわかりますが、ここで引き返すわけにはまいりません。エレン様はヴィヴィアン様のために仕事の都合をつけ、万全の準備をし、ご自宅で待っていらっしゃるのですから。それに、きちんとエレン様本人からご招待を受けたでしょう?」