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(来ちゃった! 本当に来ちゃった!)


 どうしよう。心臓が今にもとまりそうなぐらいドキドキしている。というか今とまったらめちゃくちゃ幸せに死ねるんじゃなかろうか? なんといっても聖地に向かっているんだし。本望だし。馬車のなかから街並みを眺めつつ、わたしはゴクリと唾を飲む。


「よかったですね、ヴィヴィアン様。エレン様のご自宅に招待していただけるなんて……また一つ夢が叶いましたね」


 向かいの席に座ったヨハナが感慨深げに口にする。わたしは首がもげるんじゃないかっていうぐらい、何度も何度も力強くうなずいた。


「そう! そうなのよ! これまでご自宅の前には何回もお邪魔したけど、中に入るのははじめてでしょう? わたし、すっごく楽しみで! だって、エレン様が住んでる場所よ? 聖地よ? こんな機会、もう二度とないだろうから……」


 うっとりと頬を染めるわたしを前に、ヨハナがそっと目を細める。