「先輩、いつものってなんですか?」

「ん〜〜? 来てからのお楽しみだよ。驚くぞ? 俺も最初に見たときびっくりしたし」


 ニヤニヤと笑いながら、先輩が俺の顔をじっと見つめている。注文の品が来るのを待っている間、俺はいつになく気もそぞろだった。


「――――このナプキン、シールドの魔法陣が刺繍されているんですね。細かい……こんなの売っている店、見たことがありませんけど」


 というか、需要があるとはあまり思えない。大量生産をするなら、もっと汎用性の高く、誰もが好む図柄を選ぶだろうに。もしかしたら、お守り効果でも見込めるのだろうか? とはいえ、刺繍に魔術的な効果を織り込めるとするなら、それこそ魔術師団員ぐらいのものだと思うが。


「ああ、それ? リリアンちゃんのお手製らしいよ? 本当に芸が細かいよな。全部のナプキンに刺してるらしいぞ?」

「まさか。この店の全部のナプキンに?」


 その割にはあまりにも繊細で美しいし、下手な既製品よりずっと上質だ。驚くなというほうが無理がある。落ち着かなさのあまり切り出した話題だったが、思わぬ方向に展開してしまった。