「なるほど……エレン様は好き嫌いがないのですね! どんなものでも楽しめる! とても素晴らしいことです」

「え……? まあ、そう、なんでしょうか?」


 この店員は俺のすることなすこと全てを肯定したい女性らしい。俺は少々面食らってしまった。


(ポジティブな受け取り方をする人だなぁ)


 俺が聞き手側なら、そんなふうには受け取らない。自主性がないとか、流されやすいとか、そういうネガティブな印象を受けるはずだ。
 一体なにがこの女性をこんなふうに思わせるのだろう? 俺はほんの少しだけ、目の前の女性に対して興味を抱いた。


「だったら、俺はカプチーノをもらおうかな。おまえも、俺と同じのでいいんだろう?」

「はい、それで」

「かしこまりました! カプチーノをおふたつですね! すぐにお持ちいたします」


 店員は満面の笑みを浮かべつつ、伝票に注文を書き込んだ。


「それからさリリアンちゃん、いつもの! お願いできる?」

「もちろん! 気合を入れてご準備させていただきますね。エレン様にも喜んでいただけたら良いなぁ」


 先輩とリリアンが二人にしかわからない会話を交わしている。なにを話しているのかわからなくて、俺はわずかに首を傾げた。