「こちらの席はいかがでしょう、エレン様? 窓から外が見えますし、静かでゆったりできる席だと思うのですが! もしもお好みに合わないようなら、喜んで別の席をご準備させていただきますね」


 リリアンという店員は俺の反応がどうにも気になるらしい。チラチラと顔色をうかがってくる。


「どこでも構いませんよ。空いてる場所で――――この席で大丈夫です」


 どうせ自分は付き添いだ。どこに座ろうとなにも変わらない。俺のそっけない態度にも、リリアンは「承知しました」と口にし、嬉しそうに笑った。


「それより、あなたはどうして俺のことを知っているんですか?」


 先ほどから疑問だったこと。この店員はどこで俺のことを知ったのだろう? 
 物覚えは悪くないはずなのに、彼女の顔がちっとも思い出せない。

 明るい茶髪にアーモンド色の瞳、鼻から頬にかけてそばかすが広がっている。目鼻立ちの整った美人だが、きっちりとまとめられた髪型や色味の押さえられた化粧から、無理やり地味に装っている印象だ。大人っぽく見えるが、実年齢は低いのではないだろうか――――俺はそんな予想を立てた。